息子がサッカーを始めたんだけど、サッカーって足首捻挫が多いイメージ。いざという時のために足首捻挫について詳しく教えてほしい。
足首捻挫には内反タイプ(足首を内側に捻る)と外反タイプ(足首を外側に捻る)がありますが、今回は圧倒的に多い内反タイプについて解説します。少し長くなるので二部構成です。
整形外科に勤務していたときの研修会資料をもとに作成しています。専門用語が少し含まれますが、写真と照らし合わせてご理解いただけたら幸いです。
足関節(足首)の捻挫を正しく理解する
以前に比べるとだいぶ理解が進んだように感じますが改めて言います。捻挫を軽視してはいけません。「たかだ捻挫、されど捻挫」です。足関節捻挫に対する正しい知識を身に付けましょう。
そもそも捻挫とは
そもそも捻挫とは「靱帯や関節包といった軟部組織、関節軟骨や関節唇、半月板などの損傷」の総称として用いられます。たかが捻挫と軽視されがちですが、れっきとした整形外科疾患です。足関節捻挫の場合、その多くは「靱帯損傷もしくは靱帯断裂」が起きています。
足関節捻挫はどうやって起こるか
もっとも多いのがスポーツ外傷です。特にバスケットボールやバレーボール、サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツで多い傾向です。いくつか例を挙げてみます。
- ジャンプの着地で相手の足の上に乗ってしまう
- 芝生や地面のくぼみに足を取られてしまう
- 急激なストップ動作やカッティング動作で捻ってしまう
とはいえ捻挫が起こるのはスポーツだけとは限りません。生活場面にもたくさんの危険が潜んでいます。いくつか例を挙げてみます。
- 階段を踏み間違えたとき
- ハイヒールで歩いているときに挫く
捻挫の場面は様々ですが、共通点は「足首が内側を向いていること」です。したがって、ジャンプの着地で相手の足の上に乗ってしまったとしても、足首が内側を向いていなければ捻挫は起こりません。
足関節捻挫のときの足首の向きとは
足首が内側を向くことを「内反」といいますが、さらに危険なポジションが「内反+底屈」です。底屈とはつま先が下に向いた状態です。内反に底屈が加わることで足関節はさらに不安定となり、捻挫の危険性が高まります。
「内反+底屈」とは、ハイヒールで歩いているときに捻ってしまった状態が正にそれです。ハイヒールを履く機会がある方は要注意です。
足関節捻挫で痛む靱帯
靱帯の名称とだいたいの位置関係を整理しておくとイメージしやすいです。受傷時、圧倒的に損傷されやすいのは「前距腓靭帯」、次いで「踵腓靭帯」です。
足関節捻挫の重症度について
足関節捻挫の重症度は以下のⅠ~Ⅲ度に分けられます。一言でいうと「靱帯損傷もしくは靱帯断裂があるかないか」です。
- Ⅰ度:前距腓靭帯の部分損傷、踵腓靭帯は正常
- Ⅱ度:前距腓靭帯の完全断裂、踵腓靭帯は正常or部分損傷
- Ⅲ度:前距腓靭帯、踵腓靭帯の完全断裂
一般的に想像される捻挫とはⅠ度の状態でしょう。ちょっと捻ったとか、靱帯が伸びたとか言われるやつです。まあたしかに、多少の痛みはありながらも問題なく動けることが多いです。だからこそ軽視されがちなのですが、実際は多少なりとも損傷されています。
まとめ
足関節捻挫は「内反もしくは内反+底屈」で起こりやすいと言いましたが、なんとなくイメージできたでしょうか。内反ポジションでは位置的に前距腓靭帯にストレスがかかり、内反+底屈ポジションでは前距腓靭帯にさらにストレスがかかり、さらに強くなると踵腓靭帯にもストレスがかかります。たかが捻挫と軽視せず、一般の方もお子さんのために正しい知識を身に付けましょう。
参考文献
日本整形外科スポーツ医学会広報委員会:スポーツ損傷シリーズ, 足首の捻挫
渡部欣忍:当直でよく診る骨折・脱臼・捻挫. 日本医事新報社, 2017.
D W Stoller: MAGNETIC RESONANCE IMAGING IN ORTHOPAEDICS AND SPORTS MEDICINE 3rd EDITION. Wolters Kluwer, 2007.
P. D’Hooghe:Return to Play After a Lateral Ligament Ankle Sprain. Curr Rev Musculoskelet Med (2020) 13:281–288
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