【足関節捻挫】症状と治療と予後について解説

整形外科

息子がサッカーを始めたんだけど、サッカーって足首捻挫が多いイメージ。いざという時のために足首捻挫について詳しく教えてほしい。

足関節捻挫の症状や治療、予後について解説します。治療に関してはこれが正解というわけではありませんが、多少なりとも参考になれば幸いです。こちらは二部構成の後半です。前半がまだの方は下記リンクをご一読ください。

整形外科に勤務していたときの研修会資料をもとに作成しています。専門用語が少し含まれますが、写真と照らし合わせてご理解いただけたら幸いです。

足関節捻挫の症状について

足関節 足首 捻挫

足関節捻挫の主症状は「痛み、腫れ、皮下出血」です。多くの場合、外くるぶし周辺に典型的な症状を認めます。痛みに関しては、一瞬どこが一番痛いのかわからなくなるほどの症状に襲われますが、やがて限局してきます。腫れは受傷直後から3日間くらいがピークです。皮下出血は受傷2日目くらいからじわじわと顕著になってきます。

ちなみにこの写真、わたしのリアル捻挫後の足関節です。超音波エコー検査上、明らかに完全断裂しており、前方引き出しテストも陽性でした。重症度はⅡ度(前距腓靭帯の完全断裂、踵腓靭帯は正常or部分損傷)です。前方引き出しテストの際、グニャンと足首が抜け落ちるんじゃないかってくらいの感覚に襲われます。

足関節捻挫の治療について

※文献に基づいていますが、これが正解というわけではありません。詳しくは受診先の主治医や理学療法士に指示を仰ぎましょう。

さてここからが本題ですが、治療に関しては絶対的な正解がありません。今回はわりと一般的であろう考え方についてざっくりと解説していきます。

ひとまず重症度のおさらいです。

  • Ⅰ度:前距腓靭帯の部分損傷、踵腓靭帯は正常
  • Ⅱ度:前距腓靭帯の完全断裂、踵腓靭帯は正常or部分損傷
  • Ⅲ度:前距腓靭帯、踵腓靭帯の完全断裂

足関節捻挫の治療では「靱帯の修復過程」を考える必要があります。修復過程とは、靱帯が組織学的(構造的)なレベルで回復する期間のことです。部分損傷と完全断裂では状態が大きく異なりますが、およそ「6週間~12週間」が目安です。

しかしながら、6週間~12週間時点での修復度はせいぜい60%程度と言われているため、今まで以上に大きなストレスには気をつける必要があります。とはいえとりあえず、重症度にもよりますがこれくらい経てば日常生活に支障が出ることはほとんどないでしょう。

筋肉や骨に比べると靱帯組織の修復には時間を要します。理由は血流が乏しいからです。さらに残念なことに、修復されても100%元通りの靱帯組織に戻るわけではありません。

受傷直後~3日目

無難な対応はR.I.C.E(Rest:安静、Ice:アイシング、Compression:圧迫、Elevation:挙上)処置です。急性期の炎症症状を最小限に食い止めるために行いますが、すべてを実行するのは難しいかもしれません。最低限、その場でできる対応を行いましょう。

重症度によってはおよそ3週間のギプス固定になります。程度が軽ければテーピングや簡易装具が適用になるかもしれません。何はともあれ、おとなしく医師の指示に従いましょう。わたしの場合(重症度分類Ⅱ度)、受傷翌日にギプス固定となりました。

3日目~2-3週目

【Ⅰ度】
多くの場合、痛み・腫れ・熱感などの症状は治まってくると思います。様子を見ながら普通の生活に戻ることが多いでしょう。適宜、テーピングや簡易装具を着用しましょう。ただし生活に支障がないかもしれませんが、靱帯組織が治癒しているわけではないことをお忘れなく。くれぐれも再受傷には気をつけましょう。

【Ⅱ度】【Ⅲ度】
おそらくギプス固定中かと思います。固定中はどうしてみようもありませんが、何もしないわけにはいきませんね。できれば患側の足指の運動、患側の荷重練習、健側の筋トレを行いましょう。固定されているとはいえ誤ってぶつけたり、捻ったりすると患部に響きます。くれぐれも注意してください。

2-3週目~12週目

【Ⅰ度】
靱帯組織の修復がある程度進んでいる状態。ほとんど問題なく生活できていると思いますが、捻挫で一番怖いのは再受傷です。Ⅰ度のような軽症の方はむしろ陥りやすいかもしれません。捻挫はクセになると言いますが、まさにその通り。きちんと修復が完了しない状態で受傷を繰り返すと、一生引きずることになります。慢性足関節不安定症が代表的です。

【Ⅱ度】【Ⅲ度】
長期間のギプス固定には弊害も多いため、長くても2-3週間です(わたしは2週間でした)。このくらい経つと靱帯がゆるく結合してきます。それ以降はテーピングや簡易装具を使用しながら、少しずつ普通の生活に戻っていきます。ただしギプス除去後は思っている以上に足関節の可動域や筋出力が低下しており、怖さも相まってめちゃめちゃ歩きづらいです。痛みや腫れはだいぶ治まっていますが、無理に動かすと痛いです。

ということで、できればこのタイミングでリハビリテーションを受けましょう。不安なままわけもわからずに自主トレーニングをするよりも、専門家に管理してもらう方が賢明です。

National Athletic Trainers’ Association(NATA)によると、再発予防として「バランスや神経筋コントロールに重点を置いたリハビリテーションを最低3ヵ月間続けること」が強く推奨されています。

さらに再発防止において推奨度は低いながらも「観測の足関節や股関節周囲の筋力アップ」「足関節可動域制限の改善」も欠かせません。いずれにせよスポーツ復帰を目指すのであればすべて重要ですが、ごく一般的な生活を送る方にとってはやや過剰かもしれません。

とにかく大切なのは「靱帯の構造的な修復」を考慮することです。これを無視して、無理をしても何の得もありませんと、主治医がおっしゃっていました。スポーツ復帰を目指すのであれば「受傷から3ヵ月前後での復帰」を目標に、ある程度の計画性をもってリハビリテーションに励む必要があります。

ただし3ヵ月を過ぎたからとはいえ、残念ながら靱帯が100%元通りになることはないのが現状。適切な対処を施しながら上手に付き合っていく必要があります。

足関節捻挫の予後について

足関節捻挫の再発率は下肢傷害のなかで最も高いです。とくにスポーツにおける再発率は73%であり、そのうちの59%に痛みや不安定感などの後遺症が残存していたとのことです。ごく一般的な生活を送る方の再発率は不明ですが、あまり軽視しないほうが賢明でしょう。

スポーツ選手に限って言えば保存療法がダメなら手術療法も選択の一つです。とはいえ、いずれにせよ治せるときに治すのが重要です。100%元通りとはいかずとも、できるだけ痛みな不安定感なく、元通りに近い状態にまで治すのが大切なのです。

おわりに

捻挫の瞬間はコンマ1秒の世界です。意図せず瞬間的に強い負荷がかかったとき、靭帯損傷や断裂が起こります。たかが捻挫、されど捻挫です。あまり軽視せず、きちんと対処しましょう。そして捻挫をしたら、面倒くさがらずに整形外科を受診しましょう。

参考文献

篠原 純司:スポーツ活動における足関節捻挫―後遺症と捻挫再発予防について― . 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第3巻, 第2号, 127-133(2018)

小林 匠:足関節捻挫の病態と治療. 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第3巻, 第2号, 117-126(2018)

コメント

タイトルとURLをコピーしました