小児の高次脳機能障害について

認知症

小児の高次脳機能障害の原因となる疾患

小児の高次脳機能障害の原因となる疾患として、代表的なものは脳外傷、急性脳症、低酸素性脳症、脳血管障害です。具体的に見ていきましょう。

脳外傷

交通事故によるものが圧倒的に多いです。幼児期では歩行中に自動車にひかれる事故、それ以降では自転車に乗っているときの事故が多くなります。また乳幼児期では虐待による脳外傷も挙げられます。

急性脳症

インフルエンザウイルス(16%)、ヒトヘルペスウイルス(16%)、ロタウイルス(4%)、RSウイルス(2%)などが原因と言われています。割合としてはかなり少ないようですがCOVID-19が原因と思われる急性脳症も確認されています。そもそも急性脳症自体が400~700人/年くらいなので、割合で言えば他の疾患に比べると非常に少ないことがわかります。

低酸素性脳症

風呂場での溺水、食物や玩具を喉に詰まらせる窒息などといった不慮の事故、他には先天性心疾患関連の心肺停止などが挙げられます。

脳血管障害

脳動静脈奇形破裂による脳出血、脳血管異常や脳外傷、周術期による脳梗塞などが挙げられます。

小児の高次脳機能障害の特徴

小児の高次脳機能障害も成人の高次脳機能障害も基本的にもは類似していますが、小児では以下のような特徴があります。

  • 発達に伴い症状が変化する
  • 脳の可逆性があるために症状の改善がある
  • 原因疾患により特徴的な症状がある
  • 検査方法が限られている
  • 日常生活や学校生活からの情報が有力
  • 就学するまで障害が目立たないことが多い
  • 環境により症状が変化する
  • 二次障害の予防が欠かせない

小児の高次脳機能障害への対応

対応するにしてもまずは正しい検査が必要となりますが、高次脳機能障害を評価する神経心理学的検査には小児に行えるものが少ないのが現状です。したがって家族や教師などからの情報収集、遊び、検査課題中の様子を観察することが判定の有力な情報となります。

小児の高次脳機能障害の場合、本人だけでなく家族、学校の先生や各関係者との関わりが重要となります。そこで可能な限り障害を正しく理解してもらい、基本的には障害そのものの改善を目指します。しかし必ずしも障害が改善できるとは限らないため、障害の理解を深めるとともに他の手段や環境調整で補っていくことも必要となります。

高次脳機能障害と発達障害

高次脳機能障害の症状の一つである注意障害は発達障害における注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状と類似しており、さらに高次脳機能障害の症状の一つである固執性・対人技能拙劣・感情コントロール不良は発達障害における自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状に類似していると言われています。

対応方法などの考え方としては類似点が多くありますが、発達障害児の症状はそれぞれの疾患によってある程度把握しやすい一方、高次脳機能障害児では一人ひとり症状が異なるケースが多く、それらの症状も時間の経過とともに変化していくため対応が難しいと言われています。

小児の高次脳機能障害の予後

小児の脳には可逆性があり、成人よりも予後が良いと言われています。しかし発達途上の脳損傷が故、脳に与える悪影響が目立つこともあります。小児期に脳損傷を受けて高次脳機能障害をもった小児が成人になって社会に出たときに問題が生じる場合もあるとのことです。したがって長期的な視点で見た場合、必ずしも予後が良いとは言い切れません。

まとめ

小児の高次脳機能障害についてざっくりとまとめてみました。原因は多々あれど、症状にはおおよそのパターンがあります。小児にとって寄り添う気持ちはもちろん重要ですが、まずは理屈で理解することも支援者としてポイントになってくるでしょう。

参考文献

栗原まな:後天性脳損傷, MB Med Reha No.175, 2014
坂爪一幸:高次脳機能障害・発達障害のある子どもの就学・復学支援, Jpn J Rehabil Med, 2018
中野貴司:小児の脳炎・脳症の傾向と特徴, Jpn J Rehabil Med, 2023

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