軽度認知障害と認知症の違いってなに?具体的に教えてほしい。
軽度認知障害と認知症の違いは、日常生活に支障があるかないかの差です。詳しく解説していきます。
※以前、認知症専門医の下で勉強していました。ここでは認知症に関して得られた知見などを少しずつ公開していきます。
軽度認知障害と認知症の違い
- 軽度認知障害
物忘れはあるけど、日常生活は一人で問題なく過ごせている状態 - 認知症
物忘れが明らかで、日常生活にも支障があるため何らかの手伝いが必要な状態
要するに「日常生活に支障があるかないか」の差です。詳しく見ていきましょう。
軽度認知障害について
軽度認知障害(Mild Congnitive Impairment):MCIと略します。軽度認知障害よりも、もしかしたらMCIの言葉のほうが浸透しているかもしれません。教科書的な概念は以下の通りです。
正常な加齢に関連する認知機能の低下と、正常な加齢による低下の範囲を逸脱した明らかな異常状態の境界状態に当たる概念。概念的には記憶などの認知機能に臨床的に有意な障害があるが、日常生活活動障害を伴わず認知症の診断基準を満たさないもので、Clinical Dementia Rating(CDR)で0.5の者などの定義がなされている。
Petersen RC, et al. 1995
堅苦しい用語が並んでいますが、MCIとはつまり「物忘れはあるけど、日常生活は一人で問題なく過ごせている状態」です。ただし、これに加えて以下の診断基準が提唱されています。
診断基準について
- 本人や家族などから記憶障害(物忘れ)の訴えが聞かれる
- 日常生活は自立しており、問題がない
- 全般的な認知機能は正常
- 正常な高齢者に比べると記憶力が低下している
- 認知症とは言えない
MCIは「正常と認知症の中間」にあたります。したがって、ごく軽い認知機能の障害はあっても、本格的な認知症ではありません。
予後
- 認知症を発症するリスクが10-15%/年の単位で増大
- 認知症を発症するリスクは健常者の約10倍
- 特にアルツハイマー型認知症を発症するリスクが高い
ネガティブな要素を並べましたが、必ずしもMCIの方すべてが認知症を発症するわけではありません。MCIのまま長期にわたり留まる方、稀に認知機能が正常化する方がいるのも事実です。悲観のし過ぎはかえって状態を悪くします。
まとめ
軽度認知障害(MCI)とは、物忘れはあるけど日常生活は一人で問題なく過ごせている状態です。認知症とは、物忘れが明らかで日常生活にも支障があるため何らかの手伝いが必要な状態です。両者の違いを一言で言うと、日常生活に支障があるかないかの差です。
参考資料
博野信次:臨床認知症学入門 正しい診療 正しいリハビリテーションとケア 改訂2版, 金芳堂, 2007
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